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東京女子医大病院の看護師の賞与カットから学ぶ、ボーナスカットがどれだけ愚かなな経営判断だったかということ

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 本記事の内容

 

 

 

 

医大病院で働く看護師のメリットとは

 基本的に、医大病院での看護業務はハイパーハードです。

医大病院では、多くの診療科を抱えているため、働いている看護師のローテーションも激しく、その都度覚える手技、業務が非常に多いのが特徴です。

 その中で、看護師が医大病院で勤務するメリットとしては、最先端医療や多くの診療科での ”経験” しか旨味がないのが現状です。

 

 そんな中、東京女子医大の場合、看護専門学校を設置しております。さらに、看護師免許取得後、東京女子医大病院で働くことによって、返済が免除される紐付き奨学金を用意することで、人材確保をしています。

 

 

 

 

 

東京女子医大病院の看護師の給料はいくら?

 基本的に医大病院の給料は低めに設定されています。

 問題の東京女子医大病院も、高物価である東京都新宿区という都心にあるにも関わらず、標準的な給与水準と言えます。

具体的な給料として、東京女子医大病院のホームページを参考んいすると、想定される給与は以下の通りとなります。

基本給約23万円~+夜勤手当5万円~ の計30万円程度。

ここに、残業手当をつけて、やっと手取りで月30万円程度になるでしょう。

 

 

そもそも賞与は何のためにある?

 医大病院での看護業務はハイパーハードです。

 しかも、毎月の給料は少なめです。そもそも、看護師の場合、ボーナス(賞与)は、『今期は売上が良かったから、ボーナスを支給するよ!』というシステムではありません。

 賞与分の賃金を12ヶ月で割って支給しても、何ら病院の収支は変わらないのです。

 

では、何でボーナス(賞与)が存在するのか?

  上記の通り、大学病院の看護義務はスーパーハードです。そのような環境でも、『大学病院を今すぐ辞めたいけど、3ヶ月後はボーナスの支給月だから、それまで頑張ろう。』と働いてくれるのです。

 そうやって、少しでも長期間、退職しないでもらうための経営策として、最も有効な方法こそが賞与なのです。

 毎月の給料を低めに設定し、賞与というまとまった賃金を定期的に支給することで、心理的にお得感を出しているのです。

 

 

賞与カットは看護師をナメている

 今回、東京女子医科大学病院では、コロナウイルスの対応で大学病院の収支悪化を理由に看護師を含む全職員の賞与をカットすることを発表しました。計上した赤字は約30億円です。

 しかし、考えてみるとコロナウイルスの対応で最も業務量が増えたのは、間違いなく看護職員でしょう。また、体力面での負担増加はもちろんのこと、看護師自身が感染した場合のアフターケアも不透明のまま、看護に従事していたスタッフへの対応として非人道的、非合理的といえるでしょう。

 そもそも、コストの管理、改善は病院役員の仕事です。収支管理に不備があったのであれば、役員の経営管理不足となることになります。今回のように経営状況の悪化が生じた場合に責任を取るべきであるのは、病院役員であることは自明でしょう。

 大学病院であれば幹部クラスの年収は数千万円単位であるので、削るところは他にも膨大にある中、よりにもよって現場の職員の賞与をカットすのは、『頭の悪い看護師の賞与なら、切っても文句は言わないだろう。』と考えた上層部の目論見が見えてしまいます。

 看護師は立派な職人です。しかも、看護師が働き口に困ることは、まずありません。その為、特定の病院に固執する人は少ないのが現状です。大学新卒の人が、就職した企業に死ぬまで就業しようとする価値観は看護師にはありません。よって、看護師の賞与カットは、人材の流出に直結するので、絶対に避けるべき方策なのです。

 

 

 

全職員の夏の賞与をカットすれば経営は改善するのか?

 東京女子医科大学のホームぺージを確認すると、職員の総数は約3000名となっています。非正規職員など、夏の賞与が支給されない職員もいると考えられますが、職員一人当たりの賞与額を平均40万円と多めに家庭して、今回の賞与カットが与える東京女子医科大病院の収支はどの程度か計算してみましょう。

 

40(万円) × 3000(名) = 12(億円)

 

 東京女子医大病院の職員数は、ホームページを参考としていますが、おそらく非正規職員もカウントしているはずなので、実際にはもっと少なくなる計算になります。つまり、夏の賞与カットのみでは、赤字の補填は出来ないのです。

 今回、東京女子医大病院の発表によると、約30億円の赤字を計上しているので、このまま、赤字補填を人件費から捻出するというスタンスを続けるのであれば、冬の賞与もカットすることが予想されます。

 

 

 

 

新しい看護師を入れれば問題ないのか?

 今回、東京女子医科大学病院の看護師400人が一度に退職を申し出ました。それなら、『新しい看護師を400人入職させればよいのでは?』という意見も上がり、実際に東京女子医科大学病院もホームページで330名の看護職員の募集をかけています。

 しかし、これにはかなり無理があります。理由は3つあります。

 まず、ホームページには、あたかも賞与が支給されるかのように、記載されていますが、おそらくこれは、去年の支給実績です。今年度、来年度以降の支給を確約するものではありません。おそらく、きちんとボーナスを支給するものと誤認することを狙っているのでしょう。

 また、東京女子医大病院のホームページによると看護職員は1200名となっています。その1/3にあたる400名を失い、新たに330名を確保したところで、マンパワー不足になることは間違いありません。また、看護師の場合は新人を教育する期間が必要であり、成熟するまでにも時間を要します。東京女子医大病院の規模で、全体の1/3が新人という状況で病院を運営することはまず不可能と考えて間違いないでしょう。

 最後に、今回の騒動で賞与を支給しないと明言している病院に、わざわざ入職しようとする看護師がいるはずがないのです。

 

 

この後、東京女子医大病院はどう動くか?

 まず、今年の夏の賞与は昨年度と同じ水準で支給されるでしょう。そして、その事実を猛アピールするはずです。そのようにして、ブラックなイメージを何とか払拭しようとするでしょう。そもそも、東京女子医大病院のように、多くの関連施設など、資産価値のあるものを数多く保有している病院が30億円程度の原資を確保出来ないはずがないのです。

 

 

東京女子医大病院は今後どうすべきか?

 今回のボーナスカット騒動で、東京女子医大病衣は著しくイメージを悪化させてしまいました。それは、医療職者からのイメージダウンだけでなく、『職員への給料をカットする病院は、連鎖的に患者へのサービスも低いかもしれない。』という患者へのイメージダウンも避けられないのです。

 よって、今後東京女子医大病院がすべき行動とは、まず、収支悪化の原因が何であったのかを明示し、人件費削減以外の対応策が無かったのかを説明することでしょう。もし、人件費削減以外の方法があったのであれば、素直に謝罪し、病院役員への少々過度ではないかと感じるようなペナルティを課すことを全力でアピールするべきでしょう。 

 また、病院役員の入れ替えなど、病院の経営方針を抜本的に改善する対策を講じることが出来れば100点満点のポジティブキャンペーンとなるでしょう。