『精神科は一般科に比べて楽だよ。』
そのような言葉を聞いて、転職の際、精神科を視野に入れる人も多いと思います。
しかし、実習から見える精神科病棟の景色と臨床のそれとは、全くの別物です。
確かに、精神看護は面白いのですが、本当に精神看護が面白くなるためには、過程があり、いきなり面白いと思える訳ではありません。
今回は、これから精神科看護に転科を考えている看護師向けの記事にします。
この記事の内容
実習と実務は違う
まず、当たり前ですが、実習と臨床は全くの別物です。
実習の時は、患者さんと1~2週間じっくり関われたと思いますが、臨床は実際に患者さんとじっくり関われる時間はごくわずかです。
比較的、慢性期にある患者さんを扱う病棟であれば、じっくり関わる時間も確保しやすいのですが、急性期であればその時間も極めて短い傾向があります。
実習の時、『 精神看護が一番楽しい実習だった。 』、『 精神科領域が最も興味があった。』という理由だけで入職すると、理想と現実のギャップに悩むことになるかもしれません。
すぐに精神看護なんて出来ない
精神科病院に入職し、晴れて精神看護師になったとしても、いきないり精神看護が出来る人はいません。
本当に精神看護をしようと思ったら、相当な”心の余裕”が必要となります。
”心の余裕”を作る為のポイントを示しておきます。
心の余裕を作るポイント
・看護以外の業務や、病院のルールなどの雑務が脊髄反射レベルで出来る
・教科書に書いてある精神看護としての対応も脊髄反射レベル
・高頻度使用される薬品の効果・特徴や副作用が理解出来ている
・医師の特徴、性質を理解出来ている
・私生活で強いストレスにさらされていない
などなど.....。
これらの業務、調整が総合的に出来るようになるには、相当な時間がかかります。
精神看護に集中できるようになるには、これらの” 精神看護以外の部分 ”が出来るようになってからでないと難しいのです。
よく、入職1年程度で『もう学ぶことはない。』と言い残して退職していく看護師がいますが、まだ精神看護の麓も見えていないと言っていいでしょう。
忙しい雰囲気を出してはいけない
看護師が忙しい状況になると、どうしても焦りが生じてしまいます。この”焦り”は患者さんにも伝播します。 特に精神科の患者さんには傾向が強いです。
患者さんが不安になると何がマズいか...。
それは、忙しい業務をこなしていても、平気で話しかけてきます。特に不安を主訴にしてる患者さんはこの特徴が顕著に現れます。
( 患者さんが話しかけてくること自体は、患者さんの状態把握の面でも悪い事ではないです。)
緊急性の高い仕事をしている時に話かけられると、どんな人でもイライラしてしまうものです。そのイライラを患者さんに表出すると、その後の関係性を悪くなることに繋がり、看護業務がしにくくなっていってしまいます。
患者の悪口を言わない
精神は他科に比べて、異常行動をとる患者が多いことが特徴です。異常感覚、異常行動で入院している患者がほとんどなので、当たり前です。
時には、妄想や暴言の矛先が自分に向くことがあります。
患者の悪口の恐るべき効果
患者さんに対して陰性感情を抱くことは、人間として普通のことです。しかし、その陰性感情を『 悪口 』という形で同僚に表出することはオススメ出来ません。
その理由は以下の通り
・自分の陰性感情が増強さえれる
患者さんの悪口を言ってしまうと、言っている自分の陰性感情は増強してしまいます。苦手な患者がますます苦手になってしまいます。すると、患者さんに何かトラブルが起きた時、冷静な判断が出来なくなってしまいます。それにより、患者さんへの適切な処置が遅れれば、重篤な状態になりかねません。
・同僚にも悪影響
同僚には新たな患者さんへの陰性感情に加え、『 偏見 』が生まれてしまいます。この陰性感情と偏見は、精神看護を行う上で、良い効果は一つもありません。必要以上に患者さんの行動をマークして、他の本当に注意して看る必要のある患者への注意が散漫になる場合もあります。
・看護者からの暴力につながる
毎年、看護師からの患者への暴力事件がニュースなどに取り上げられています。それほど、医療現場における患者さんへの暴力行為については世間から注目せれているのです。
患者さんへの陰性感情は、最悪の場合、看護師からの患者への暴言・暴力に繋がります。看護師から患者さんへの暴力があった場合、病院や行政から何らかのペナルティがある場合がほとんどです。
これは、周囲の看護師などの医療スタッフからも患者さんからも良い気持ちのするものではありません。お互いに不信感を生み、良好な関係を築くことが難しくなってしまいます。