私は看護師という職業柄、年上の後輩と出会う機会が多いです。
年上で且つ看護学校を卒業してきて右も左も分からないという人にもしばしば出会います。
その都度、どうやって新人指導にあたればいいかを、いつも考えさせられます。
私は常に『素晴らしい後輩を育てることは、先輩であるあなたが今後いい仕事が出来る準備になる。』
そう考えて、責任を持って新人教育にあたっています。
今回は、これまで年上の後輩の指導にあたっててきて、どのように接し、教育にあたれば効率よく成長してもらえるかについて考察・解説していきたいと思います。
本記事の内容
- 年下先輩としてのマインドセット
- 年上後輩のスペックの高さを認める
- 先輩として学ぶ姿勢を持つ
- 正しい言葉遣いなんてない
- 年上後輩の悪口を同僚に言わない
- あなたの仕事はカンタンですか?
- 教育者としてのマインドセット
年下先輩としてのマインドセット
『自分の方が先輩だから偉い』という固定観念を持っている人は教育には向いていないかもしれません。
そう思ってしまっているうちは、年上の後輩に何かを教える技量はないと考えて良いでしょう。
確かに相手は後輩かもしれません。しかし、やはり人生の先輩であることは間違いないのです。
そこを意識しないで、『あいつは年上だけど後輩だから、自分の方が上。』というところだけにしか目がいかず、偉そうな態度がにじみ出ているようではお互いにストレスになってしまいます。
お互いに成長することは難しいでしょう。
年上後輩のスペックの高さを認める
まず、『年上後輩の方があなたよりも基本能力は上である』という事を理解しましょう。確かにあなたの方がその職場では先輩であり、その職場でのルールや知識は多いと思います。しかし、年上後輩はその他で積み上げてきた知識と経験があります。
もしその知識と経験が、あなたの職場での仕事とマッチした時、年上後輩の成長速度は指数関数的に伸びていきます。
それでもあなたの方が、スペックが上だと言えますか?
先輩として学ぶ姿勢を持つ
あなたがこれまで知識と経験を積んできたように、年上後輩にも積み上げてきた知識と経験があるのです。まずそこをしっかり認めましょう。
例えば、後輩は結婚・育児、親の死などの経験を既にしているかもしれません。それだけでも非常に大きな経験値の差です。もし、あなたが未経験であれば、決して埋める事の出来ない経験値の差なのです。
もし、クライアントとそういった経験談になった時、経験しているか否かの差は大きな説得力の違いになってしまいます。だって未経験の人の話はただの想像なのですから。
年上後輩から学ぶことが出来ることは非常に多いです。
もし、『学べることが全くない。』と感じているならば、それは勘違いである可能性が高いでしょう。
もし、後輩が”仕事の出来ない人”であれば仕事を教える難しさ。人にものを教える難しさを学ぶことが出来るでしょう。ましてや年上の後輩に対して、モノを教えるのであれば、一層自分の伝えたい事の伝え方で悩むはず。
その悩みもあなたの成長であり、収穫なのです。
正しい言葉遣いなんてない
年上後輩教育にあたって、まず最初に悩むことが年上後輩への言葉遣いです。
タメ口?それとも敬語?
すごく悩むと思います。私のオススメは、最初は敬語で話して、徐々に打ち解けられたら基本は敬語でタメ口も混ぜるです。
しかし、年上後輩に仕事のノウハウを教えることが出来ればいいので、言葉遣いなんて二の次です。必要なこと伝えることが出来ればOK。これが本質です。
どういった言葉遣いが適切かなんて、あらかじめ答えがあるものではありません。後輩が真っすぐ育てば正解だし、育たなかったら不正解です。
仮に、あなたの言葉遣いが不適切であったことが理由で、後輩が真っすぐ育たなかったとしましょう。
何か違和感を感じませんか?
そうなのです。
あなたの”言葉遣いなんか”では、人の成長が促されたり阻まれたりしないのです。もし、成長しなかったらあなたの教え方や教育内容が間違っているか、そもそも後輩の能力が不足なのです。
年上後輩の悪口を同僚に言わない
私はどんなに後輩の出来が悪くても後輩の悪いところ、軽い失敗は流布しないようにしています。それは私が後輩にとって、働きやすい環境の一部であるようにしているからです。困っている時に、真っ先に相談できる存在でいたいからです。(適切な答えが出せるとは言ってません。)
後輩の悪口を気軽に口外している人を見ると無能さを感じます。
自分の無能さをカモフラージュする為に新人という無知な存在を陥れているようにしか見えないですよ。
あなたの仕事はカンタンですか?
あなたの仕事はガチャポンのカプセルに玩具を詰めるようなカンタンで誰でも出来る仕事ですか?
もしそうなら、後輩に仕事を教えるのもカンタンだし、後輩の仕事の習得も早いでしょう。
しかし多くの場合、覚えてもらわなければならない仕事が山積しています。
時には、後輩自身が新しく工夫を凝らした仕事をする必要も出てくるでしょう。
そんな複雑な仕事を一朝一夕で覚えてもらうことは現実的に不可能なのです。
ですから、長い目でゆっくり成長を見守るスタンスで大丈夫なのです。
教育者としてのマインドセット
そもそも、職場での先輩のとるべき態度は、教師の態度ではありません。
あくまで、職業人・プロフェッショナルとしての立場から後輩の成長している伸長方向を修正する責任があるだけです。
基本的な知識やルールは後輩が自分で獲得する。
先輩は見守り、成長方向が明らかにおかしい時に修正してあげる。
しっかり線引きすることで、お互いに成長することが出来るのです。
”伸ばそう”とはしない
”後輩を伸ばそう”と過度に思うのは辞めましょう。あなたが疲れます。
あくまでも伸びるのは後輩の仕事です。
先輩としてあなたがするべき教育は、伸びている後輩が真っすぐ上へ伸びるように方向を調整してあげることです。
時には自分の知識を教えたなることや効率的に仕事をこなす方法を手取り足取り教えたくなる気持ちも分かります。しかし、それだけでは収穫が少なくなってしまうのです。
まずは、実際に行動してもらう。それから一緒に反省するという姿勢が相手も自分も成長することが出来る方法です。
教科書に書いてあることは教えない
基本的なビジネスマナー・スキル、知識の獲得は後輩が自発的に学習しなければ、獲得することは難しいです。あなたが1から手取り足取り教えることはあなたの時間と労力のムダです。
教科書に書いてある知識を教えることはやめましょう。
職場の先輩として仕事ではありません。完全に後輩のするべき仕事です。
これを先輩であるあなたがしようとすると、膨大な時間がかかる上、効果はメチャクチャ低いのです。費用対効果が著しく低いことはお互いの為になりません。
もし、後輩の学習意欲が低く、マナーやスキルの勉強を怠っている事が明らかだった時、方向転換してあげるのが先輩です。
言葉で『勉強してきて。』と伝えるのは簡単ですが、それでは後輩の勉強へのモチベーションは上がりません。あなたも学びがありません。
こんな場面の時、私は勉強している姿を見せるようにしています。私は普段勉強はしていると口外はしていますが、実際に勉強している姿同僚に見せることはほぼありません。
後輩には『先輩もまだこんなに勉強しているんだよ。』と背中で語ることが出来るくらいの器量があってもいいのではないでしょうか?
年上後輩からイジられる先輩になる
これは年下、年上に限らず私が意識しているモットーです。
同僚からミスや欠点を指摘してもらえる機会なんてそうはありません。
自分の仕事をなるべく多くの同僚に目を通してもらい、アドバイスが貰えたら全部自分の成長につなげることが出来ると思っています。
例えるなら、Twitterで自分の考えを発信した時、アンチコメントやクソリプをもらいまくって、自分の考えが正しいか再検討出来る環境を自分の職場に作ること。そうすることで、より精度の高い仕事が出来るようになるのです。
そこに、先輩後輩の垣根は必要ありません。
先輩としての仕事を魅せる
以前、こんな年上後輩がいました。
彼は一回りも年上の後輩であり新人でした。
ある時、重度の知的障害者のケアに一緒に入ることになりました。
対象の知的障害者は基本的ケアを拒みます。その時、彼は土足で対象障碍者のベッド上に上がって抑えつけたのです。
確かに清潔とは言えない障害者のベットに靴を脱いで上がるのは抵抗があると思うし、そこまでする必要はないと思います。しかし、やはり私はやりすぎだと思いました。
私は彼に尋ねました。『自分のしていることに違和感ない?』
彼は『あります。』と空かさず答えました。
新人は想像以上に先輩の行動を観察していて、すぐに吸収してしまいます。もしかしたら彼も、他の先輩がそういう行動をとっていたのを見て、学んでしまったのかもしれません。
しかし、私はそのまま育って欲しくありませんでした。成長の方向を変えてあがたかったのです。
私は対象の障害者を抑えつけなくても、ケアが出来る方法を教えてあげました。そして、その方法が唯一無二の方法でなく、きっと他にも方法はあると伝えました。
彼はその後、ケアの方法を色々試すようになっていました。
年上後輩のプライドを理解する
年上後輩にも今まで積み上げてきたキャリアに対するプライドがあります。
『後輩なんだからプライドは捨ててしまえ。』というのは少々乱暴です。
気持ちで理解出来ても、現実的には無理でしょう。
年上後輩のプライドとメンツを守ってあげるのも、優秀な先輩として出来るべきであると思います。