精神科ナースの本気メモ

読むだけでスキルアップできるステキなメモ帳

精神科で画像・心理検査を受ける患者に行う看護についてまとめ

 

はじめに

 精神疾患をもつ患者の看護にあたるにあたって、看護師は,常に患者が発する言葉に注意を傾け、患者の発した言葉の意味する事について注意深く、繊細にアセスメントする必要がある。それは、精神疾患を持つ患者は身体症状について自ら正確に伝えることが難しく、検査のタイミングが遅れることが珍しくないからである。

 一見,精神症状とも思える訴えであっても、実は重大な身体疾患が隠れていることは珍しくない。患者は,身体症状を妄想や体感幻覚に絡めて表現したり(『脳が腐ってしまった。』『お腹の中で蛇が動いている』など), 反対に、まったく訴えなかったりする。

 以上に挙げた例以外でも、意識障害や向精神薬の影響で表現そのものが困難な場合もあり,そのわかりにくさから身体疾患の発見が遅れる恐れがある。

 精神科の看護師は,患者の訴えを最初から「精神症状」と決めつけてはならない。よく患者の訴えを聴き,身体に触れ,全身状態の観察を十分に行い,医師に報告し,検査の必要性について検討する。その判断をいかに速やかに行うかで患者の予後が左右される。

 以上のような看護を実践する為に、通常の患者の状態を把握しておき、「いつもと違う」「なにかおかしい」といった24時間ベッドサイドでケアを行っているナースならではの気づきと観察から,検査による客観的なデータによって最終判断をする姿勢が重要である。

 

 

 

説明と同意【インフォームド・コンセント】

 すべての検査は、適応(その検査の必要性)を十分に検討し、患者の同意のもとに行われる。同意を得る際、看護師として押さえておきたいポイントがいくつかあるので紹介したい。

侵襲性が高い検査を実施する場合

侵襲性の高い検査は患者が納得して,同意書にサインする必要がある。

 

患者に意識障害があるなど意思の確認が困難な場合

患者の家族に説明し同意を得る。

 

 検査の必要性,内容について医師が説明する際、看護師は患者が直接医師に質問できるよう配慮する。(時間、場所、参加者など) また、説明後も患者がどのように理解したのか確認しながら、理解しやすい言葉で説明を補い, 自己決定を支援する。

 精神科においては,発熱や腹部症状などの所見から検査の必要性が明らかな状況であっても,精神症状や理解力の低さなど、様々な理由の為に、患者が検査を拒否することが少なくない。この様なケースの場合、看護師は,患者が検査を拒否している理由は何か。その理由を探りながら患者の不安な気持ちを受け止め,患者が適切な選択ができるよう援助する。ただし、拒否がある場合であっても、緊急性があり患者の自己決定能力に問題があると判断したときは,家族の同意のもと,生命の安全を優先し強制的に介入することが必要な場合もある。そのような場合であっても,①実施したい検査の妥当性、②代替可能な検査方法の有無について、複数の医療者で慎重にかつ速やかに検討を行う。患者の精神的フォローとして、なぜ今この検査が必要なのか,医師と協力しながら説明を繰り返し,できるかぎり患者が安心して検査が受けられるよう努める。

 


検査に対する反応を観察する

 検査決定後、検査の具体的な内容、検査の流れについて看護師が説明を行う。患者の精神状態が安定しているときに, タイミングを見計らって,わかりやすい言葉で説明用紙などを活用しながら実施する。このとき,観察したい患者の反応を以下にまとめる。

1.検査に対して理解できているか(理解力)

2.積極的な協力が得られそうか(禁食、前処置などの協力の可否)

3.不安や恐怖の有無(拒否的な言動、離院のリスク)

 以上を観察し,患者が不安にならないように注意する。説明後も精神状態を経過観察する。上記で収集した情報は、医師·ナース間で情報を共有し,必要時,検査室にも情報を提供する。

離院の可能性がある場合

 離院の可能性がある場合、医師に報告し,延期、複数のナースで対応するなどの対応を検討し,指示を受ける。

転倒リスクが高い場合

 歩行状態、身体症状、安静度、を観察・アセスメントし、また行動制限を確認する。以上の情報を総合的に考慮した上で、検査室までの搬送方法を検討する。(歩行,車いす, ストレッチャ一など)また、移送やトランスファーの際の転倒·転落に留意する。

検査時の観察

 検査時は患者が不安になっていないかを観察する。患者に不安感がある様子であれば、不安感を軽減する為に、その都度説明を行う。また検査中は、そばについているか、検査が終了するまで待っているかを伝え、患者が安心して検査が行えるよう援助する。

検査終了後

検査が終わったら、以下の事項について観察する。

1.一般状態

2.疲労感

また、精神的フォローとして、無事に検査ができたことをねぎらい,適宜休息を促す。検査終了後の注意点を伝え、実践できるか観察を継続する。検査結果については後日医師から説明する旨を伝える。