精神科ナースの本気メモ

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精神科って面白い!! 私のレポート1 【傾聴の重要性】

 

50代。男性。統合失調症A氏。

とにかく毎日理解不能な言葉を投げかけてくる。

『僕はもっと情報に埋もれた生活をしたかった。』

『五億ですよ。いや十五億かなぁ。』

自分の主張を聴いてもらうのが好きな患者だった。

 

 

別段、他患者に危害を加えるわけでもなく、暇さえあれば私に声をかけてくる患者さんでした。

私は患者さんと他愛もない会話をするのが好きで、時間に余裕があるときはA氏との会話を楽しんでいた。

いきなり、興奮したり、罵声を浴びせてくる患者も多数いる閉鎖病棟という環境下では、癒し系の存在だったA氏でした。

 

ある時ふと、

『Hanana君。牛乳は一日に何本飲んだらいいですか?』と尋ねてきた。

A氏は金銭面に関しては結構裕福な方で、他患者さんと比べて大金を持ち歩いている方だった。

私は、あまり適当なことを言ったら、A氏は病棟内の自販機で大量に牛乳を買い込んでガブ飲みしそうな気がしてならなかった。

なので、『一日一本くらいがいいですよ。下痢しない程度にしてくださいね。』と答えた。当時は我ながら、完璧な解答だと思った。

 

しかし、A氏は翌日も同様の質問を私に問いかけてきた。

同じ内容のことを連日話してくることは、決して珍しことではないA氏。

その時も、『一日に一本くらいにして下さいね。』と答えた。

そんなやりとりが、一週間くらい続いていた。

 

するとある日、A氏の牛乳の話にバリエーションが追加された。

『オリーヴ君。もっといっぱい牛乳飲んだらだめかな。』

私は、『A氏って、こんなに牛乳好きだっけかなぁ』と思った。

『なんで、そんなに牛乳が飲みたいのですか?』と尋ねてみた。

すると、A氏は.....

 

『いっぱいあるんだ....牛乳。』

 

『はっ?』と思った。

私の本能が『これは妄想じゃない!!奇異行動だ!!』と言ってきた気がした。

急いでA氏とともに、A氏の病室へ行った。こざっぱりとして、きれいに整理整頓されたベッド周りだった。

私はA氏に了解をとり、恐る恐る床頭台の中を見た。

 

一瞬目を疑った。

そこには、昼食についてくる、未開封の牛乳が40~50本入っていた。

どうやら、A氏はここのところ、昼食の牛乳を飲む気になれず、そのまま床頭台の中にストックしていたらしい。

そういしていたら、あっという間に牛乳がたまってきてしまい、A氏本人も捨てるわけにもいかず焦ってきたようだ。(※ちゃんと病棟にはゴミ捨て場ついてます。)

もしも、A氏の主張をスルーしていたら....きっとA氏は余裕で賞味期限切れの牛乳をガブ飲みしていたと思う。

 

患者さんとの他愛もない会話の重要性を再認識した経験でした。

 

 

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