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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の看護過程・看護計画(OP、TP、EP)のために必要な情報収集とその評価、アセスメント、看護問題に対する具体策

慢性閉塞性肺疾患の看護計画(具体策)

 

本記事の内容

 

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)のアセスメント

必要な情報収集と情報解釈の視点

1.対象となる患者の情報

①COPDの現病歴

 ・COPDの重症度(病期)


②喫煙歴


③生活状況
 ・ADLの状態


 ・活動範囲

 


④対象となる患者の認識
 COPD自体は不可逆的変化である。しかし、禁煙し気道を広げて呼吸機能を改善する薬物療法、呼吸筋や全身の機能の衰弱を防ぐことで安定した状態を長期間保つ事が可能である。よって、患者が疾患をどのように受け止め、管理していこうとしているか把握していく。


 ・疾患と治療の認識
 ・疾患の受容の程度
 ・酸素療法の必要性の認識
 ・社会復帰への意欲・期待


⑤治療に関する自己管理能力
 (コメント)呼吸機能が低下している場合には、日常生活の制限も余儀なくされてしまう。そのため、呼吸状態に見合った生活を患者自身が理解し、自己管理できる必要がある。その為、現状の患者の認識を把握し、患者・家族に正しい情報を提供することにより、早期治癒に向けて適切な治療・感染防止行動を行うことが可能になる。


⑥職業

⑦家族の疾患・治療に関する認識や協力度

 

♯A 知識不足に関連した非効果的な自己管理

 

 

 


2.全身状態の観察

①栄養状態
・食欲、食事摂取量


・食事内容
 (コメント)呼吸運動に必要なエネルギー量は150kcal/日と言われている。しかし、呼吸数が二倍になると、必要なエネルギーは4倍(600kcal)、三倍になると10倍(1500kcal)に達すると言われている。


 低栄養状態は予備力を低下させ、易感染状態になりやすくなるため、患者の栄養上体を把握する必要がある。


・水分摂取量
・皮膚状態と体重
・検査データ(TP、Alb)

 

②排泄状態
・排便回数、性状、腹部症状
・便秘対策、排便支障因子
 便秘により、腸内ガスが発生すると横隔膜が挙上され、呼吸運動を妨げる原因となってしまう。また、排便時の努責は酸素消費量を増加させるため、規則的な排便があるか確認する。

 

 


3.活動・休息のバランス

 呼吸器系の重篤な障害は生命の危機に直結する。場合によっては、気管挿管などの緊急処置が必要になるため、呼吸器症状のみならず、全身状態の観察を行う。


 呼吸器不全の程度を客観的に評価することで、治療の緊急性を判断することが出来る。動脈血ガス分析ではPaO2が60Torr以下が酸素療法開始の基準となる。慢性呼吸不全の患者は、低酸素血症の慣れから息苦しさを感じない事もあるので注意する。


♯B 肺胞-毛細血管の変化に関連したガス交換

 

 

①呼吸状態の観察項目

 ・呼吸回数
 ・呼吸の深さ、リズム
 ・呼吸音
 ・労作時の息切れ
 ・呼吸困難の有無
 ・咳嗽の有無と程度
 ・喀痰の有無と性状、量
 ・チアノーゼ

 

②検査データの観察項目
 ・動脈血ガス分析
 ・胸部X線検査
 ・肺機能検査
 ・血液検査(血算、CRP)
 ・痰培養

 


③合併症の兆候
 呼吸中枢の感受性が低下している慢性呼吸不全の状態にあるCOPD患者に高濃度の酸素投与を行った場合、呼吸が抑制されて二酸化炭素が蓄積し中枢神経系に影響を与え、二酸化酸素血症(CO2ナルコーシス)になりやすい。
 肺の収取握力の低下は、呼気を困難にして喀痰を妨げる。痰の貯留は気道を閉塞し、呼吸困難を助長していしまう。以上の理由から、気道の浄化状態を観察する必要がある。
・二酸化炭素血症(CO2ナルコーシス):意識状態
・肺炎:発熱、咳嗽、喀痰
 肺炎などの感染が加わると、呼吸不全を進行させ、悪化させる要因になるため、早期に発見し対処出来るように観察する。
・肺性心:浮腫、体重増加

 

♯C 分泌物の貯留に関連した非効果的気道浄化

 


④対象となる患者の活動の状況
 ・ADLの状態
 (コメント)どのような活動が可能であり、どのような活動が不可能であるかを把握し、呼吸リハビリテーションの内容を決定していく。

 

⑤活動時の生理的変化
 ・活動前後のバイタルサインの変化
 (脈拍、呼吸数の増加、不規則な呼吸)
 ・呼吸困難
 ・めまい
 ・易疲労感
 ・冷感
 ・チアノーゼ
 活動中の異常を早期に発見する為にも、生理的反応の観察は必要不可欠となる。日常生活もリハビリテーションの一つであるが、無理な活動は低酸素血症の原因となる。動作を促す際は、動作の強度ど生理的反応をとらえる。

 

⑥活動を制限する因子
・心機能検査(心電図検査、心臓超音波検査、胸部X線検査)
・運動機能検査
 (筋肉の萎縮、筋力低下)

 

 (コメント)患者にあった安全なリハビリテーション計画をたてる為にも残存機能を適切に評価する。
 活動耐性以上の無理な活動は、呼吸困難を助長するだけでなく、患者の自信を低下させ不安の状況に繋がる。活動による生理反応を観察し、日常生活の介助量を増やすなど配慮する。

 

♯D 酸素の供給/需要のバランスに関連した活動耐性低下

 

 


⑦活動に関する患者の認識
 ・活動に対する患者の意欲、希望
 ・活動耐性を高める必要性の理解


 呼吸困難が続くことにより、活動への意欲が低下する。すると安静を保つようになる。過度な安静は心肺機能の低下をもたらし、活動耐性をさらに低下させることになってしまう。活動への期待活動耐性を高める必要をどのように認識しているかが、今後のリハビリに影響する。

 

 

 

4.知覚・認識の状態

①疾患、治療に関する知識
 ・受容の状態
 ・治療
②心理状態
 ・不安の訴えの有無
 ・言動、表情、声の調子、睡眠状態
 COPDは不可逆的であり、病期によっては活動による低酸素血症や感染による急性増悪を繰り返すことで進行していく。また、緊急処置や改善するか不透明な呼吸困難感による不安も強い。不安は呼吸困難を増強させる因子にもなりうるため、患者の知識やと心理状態を把握する必要がある。

 

 

 

 


5.周囲の認識、支援体制

①家族構成
 ・キーパーソンの有無
 ・キーパーソンの認識
 (コメント)患者の残存機能を最大限に活用し、可能な限り自立した生活が送れるように、感染予防や食事、日常生活管理を行う必要がある。また、長期在宅酸素療法の適応となった場合には、自宅で酸素吸入の管理が必要となる。高齢患者など自己管理出来ない場合には家族の協力が必要となる。その為、患者の周囲の支援体制を把握する必要がある。

 

②社会的役割
 ・仕事の種類、内容
 病期によっては社会復帰が可能であり、患者の社会的役割を把握し支援を行う。


③長期在宅酸素療法の適応の有無
 ・社会資源の活用状況

 

 


慢性閉塞性肺疾患の主な看護診断

♯A 知識不足に関連した非効果的な自己管理

患者の目標(成果目標)

・自己管理を行う意思を表現し、実践することが出来る。
・在宅酸素療法の必要性を理解し、実践することが出来る

 


♯B 肺胞-毛細血管の変化に関連したガス交換

患者の目標(成果目標)

・低酸素状態が改善する。

 

♯C 分泌物の貯留に関連した非効果的気道浄化

患者の目標(成果目標)

・効果的な気道浄化が行え、低酸素状態が誘発されない。

 


♯D 酸素の供給/需要のバランスに関連した活動耐性低下

患者の目標(成果目標)

・活動終了後5分以内にSpO2、呼吸数、脈拍が安静状態時の状態に戻る。
・活動耐性が向上し、ADLが拡大する。

 

 

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の看護計画・具体策

♯Bに対する観察計画(OP)

 (コメント)呼吸困難をきたしていれば、速やかに全身状態、呼吸状態の観察を行い、アセスメントし、近況処置の必要性を判断する。

 

 (根拠)呼吸器の機能低下は、場合により生命の危機に直結する重篤な状態を招く。PaO2:60Torr以下や呼吸数5回/分以下、35回/分以上はきわめて危険な状態である。


(1)全身状態


(2)呼吸状態

 

(3)検査データ

 

(4)合併症の兆候

 

(5)不安の内容と程度

 (根拠)息苦しい、息が十分に据えないという苦痛は不安を招く。不安感はさらに呼吸困難を増強させる。患者の不安の内容と程度を把握する。

 

 

 

♯Bに対する看護ケア計画(TP)


(1)指示の酸素吸入の実施

 

(2)気道閉塞の予防

(根拠)単による気道閉塞は、換気をさらに妨げ呼吸不全を悪化させる。また、貯留した痰により細菌感染を起こし、気道の炎症が生じるとさらに痰が増加し、ガス交換を悪化させる結果になる。そのため、十分なん排痰を促し、気道を浄化する。


①排痰への援助
 ・体位ドレナージ
 ・スクイージング
 ・超音波ネブライザ吸入
 ・吸引
 ・水分補給

 (根拠)脱水や口腔内の乾燥は痰の粘稠度を増し、喀痰を妨げるため、、制限内での飲水や咳嗽を行う。


(3)ガス交換促進への援助
①心身の安静

 (根拠)心身の安静を保つことで、酸素消費量を最小限に抑えることが出来る。

 

②体位の工夫
 ・(セミ)ファウラー位など、患者の好む体位

 (根拠)横隔膜を下げることで、横隔膜運動が行いやすくなる。横隔膜を1cm下げることで、換気量を200~300ml増やすことが出来る。

 


③呼吸運動を妨げる要因の除去

 呼吸運動に支障が無いよう、胸部を圧迫することを避ける。寝衣、寝具を調整する。
 ・胸部の圧迫を避ける(寝衣、寝具の工夫)

 (根拠)乾燥した空気は咳嗽を誘発し、喀痰の排出を妨げる。汚れた空気も咳嗽や感染の原因になるのできれいな空気を保つように定期的に換気する。

 


④環境の調整
 ・十分な換気を行い、清浄な空気を維持する。
 ・空調を適温、適湿にする。

 

 

(4)酸素消費量を増加させる要因の除去

①便通の調整
 ・水分摂取
 ・腹部マッサージ
 ・温罨法
 ・指示の下剤の投与

 (根拠)便秘による腸内ガスの発生は、横隔膜の挙上(圧迫)し、呼吸運動を妨げる。また、便秘時の努責は酸素消費量を増加させるため、便通を調整する必要がある。

 

②不安の軽減

 (コメント)呼吸困難は常に不安や死への恐怖をを抱かせる。夜間でも常に観察していることを知らせ、安心感を持てるように援助する。
 ・不安が強いときは付き添う
 ・訴えを傾聴する
 ・常に観察しているので、窒息の危険はないことを知らせる
 ・病状の改善があれば伝え、励ます。

 

 

 

 

#Bに関する教育計画(EP)


(1)呼吸法の指導
 ・口すぼめ呼吸
 (コメント)口すぼめ呼吸の吸気:呼気比は1:4~5になるようにゆっくり吐き出す

 (根拠)口すぼめ呼吸は、口腔内にかかる圧力と同等の圧力気道にもかかる。その為、気道の狭窄を防ぎ、呼気を助ける効果がある。また、腹式呼吸は腹筋を用いることで横隔膜運動を補助する(主に呼気時)ため、効率的な呼吸法となる。
・腹式呼吸

 

(2)水分摂取の必要性

  脱水や口腔内の乾燥は、痰を粘稠にして、排痰を粘稠にし、排痰を困難にする。水分制限がなければ、1日に1500~2000mlの水分摂取を促す。肺性心(右心不全)の兆候がある場合は、摂取量に注意する。水分制限がある場合は、含嗽を促し、蒸留水でのネブライザなどを用い、加湿を図る。

 

 

 

 

♯Dに対する観察計画(OP)

(1)活動状況
①ADL(食事、排泄、清潔、更衣)
②移動動作

 (根拠)呼吸状態が安定したら、ADLを拡大する計画に入る。ADLを拡大することで患者のQOLの向上につながる。そのため、まず患者の活動耐性、活動状況、活動に対する意欲を把握していく。


(2)活動を制限する身体的因子


(3)患者の活動に対する認識

(コメント) 無理な活動を促すと、再度呼吸状態が悪化し、患者の自信の喪失につながる。自身が喪失すると、活動への意欲が減退するけっかとなってしまう。しかし、活動する事への不安から安静を保ちすぎても逆に心肺機能を低下させる。活動耐性、活動状況をアセスメントし、個々の患者にあったペース、内容でリハビリテーションを進め、活動耐性を高めていく計画を立案していく。

 

 

♯Dに対する看護ケア計画(TP)

(1)呼吸筋を強化する呼吸の運動

 ①腹式呼吸(吸気時に軽く腹部を抑え、腹部を膨らませないように呼吸する。)

 (根拠)腹式呼吸は腹筋を用いることで、横隔膜運動を補助する(とくに呼気時)ため、呼吸法として有効である。

 

(2)呼吸筋ストレッチ

 (根拠)ストレッチ刺激により、脳から呼吸筋への指令と、呼吸筋から脳への指情報をマッチさせることにより、呼吸困難の緩和を図ることが出来る。

 

(3)歩行訓練

 (根拠)下肢のトレーニングは運動耐性を向上させるので、呼吸リハビリテーションの一環として推奨される。

 

(4)活動耐性に応じたADLの援助

 ①食事動作への援助

 ②排泄動作への援助

 ③清潔動作への援助

 ④移動動作への援助

 (コメント)無理な活動は患者の意欲を低下させる。また、活動出来ないことでADLが低下すると、食事出来ないことで低栄養になったり、清潔を保つことが出来ずに感染を起こす原因になったりする。排行動が行えずに失敗すると患者の自尊心を傷つける事にもなる。
 個々の患者の活動耐性に応じたADLの援助を行う。

 

 

 

♯Dに対する教育計画(TP)

(1)活動の必要性についての説明

 計画的に運動を実施することで、活動耐性が向上する。

 

(2)活動しない場合の弊害についての説明

 ①筋力の低下

 (根拠)臥床によって生じる筋力低下の最も顕著な部位は下肢の筋肉である。一週間の安静で約10~15%の筋力が低下すると言われている。

 また、動かないことで、骨の成分が吸収され、骨折・変形を生じやすくなる。

 

 ②呼吸機能の低下

 

 ③精神状態への影響

 疾患の進行に伴う呼吸困難に対する恐怖や不安により、抑うつ的となることが多い。過度な活動性の低下により、さらに抑うつが強まる。

 

(3)活動時の注意点についての説明

①呼吸困難を引き起こす以下の動作に注意する

・上肢を挙げる。

・息をとめて動作を行う。

・動作を繰り返し行う

・腹部を圧迫する(前屈姿勢になる)

・早く、急いで行う。

・体を上下する。

 (コメント)日常生活の動作で息切れを感じると、活動への意欲は低下してしまう。出来るだけ、呼吸困難を引き起こさないように、活動の耐性を高めていく。

 

②行動はゆっくり、自分のペースで行う。

 (コメント)無理な活動は耐性を高めることなく、かえって低酸素血症をまねくので、自分の呼吸機能に合せた行動のペースをつかむ。

 

 

③椅子などを活用し、体幹屈曲を避ける工夫をする。

(歯磨き、更衣など)

 (根拠)体幹の屈曲は胸郭の可動性を妨げるため、歯磨きや行為などは椅子に座って行うと、体幹の屈曲を避けることが出来る。また、電動ブラシは上肢をあまり動かすことなく、使用することが出来るため、呼吸困難をぴょぼうすることに有効である。

 

④労作時に息苦しさを感じたら、活動を中止し、口すぼめ呼吸で呼吸を整える。

 

⑤労作前後に脈の自己測定を行う。

 

 

 

(4)活動時の呼吸法についての説明

①口すぼめ呼吸、腹式呼吸を行う

 

②各動作の前に息を吸い、動作とともにゆっくり息を吐くようにし、呼吸を止めない。