精神科ナースの本気メモ

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猿でも理解る簡単な医療観察法と処遇について

『医療観察法』とは通称であり、正式には『心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律』(以下、医療観察法とする。)という法律である。重大な他害行為を精神症状の為に行った者の処遇に関する法律である。

 

医療観察法の目的

『継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発防止を図り、もってその社会復帰を促進すること』 (医療観察法一条一項)

 

重大な他害行為とは何か定義は?

重大な他害行為とは
殺人:人を殺す
放火:故意または悪意をもって建造物や自然保護区等に火を放つこと
強盗:脅迫や実力行使などによって他人の財物を無理矢理奪うこと
強姦:相手の意思に反し暴力や脅迫、相手の心神喪失などに乗じ強要し人に対し性行為を行うこと
強制わいせつ:13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をすること
傷害:人の人体害すること
以上にあたる行為ことであり、未遂に終わった場合も対象となる。
『医療観察法』の対象となる人物は、上記の事件(対象行為という)を起こした人物で精神症状の為に不起訴処分になった者を対象としている。

 

 


入院・通院出来る医療機関

厚生労働省の指定入院医療機関あるいは指定通院医療機関に限る。
・1:1.3以上の看護職の人員配置
・病棟における医師、看護師、精神保健福祉士、臨床心理技術者、作業療法士の配置の義務付け
・1人の患者に対して各職種が1名以上の担当になり、他職種チームでケアを提供

 

医療観察法による入院と処遇

対象は精神疾患を患い事件(対象行為)を起こしたとき、その精神症状の為に心神喪失もしくは心神耗弱が認められ、不起訴処分や無罪、または執行猶予となった人(対象者)である。

検察官から地方裁判所に適切な処遇を求める申し立てがなされ、裁判所から鑑定入院命令がなされる。このように司法が関係しているところが、精神保健法と異なる。「命令」という言葉が使用されていることから分かるように、医療観察法における医療は対象者の希望によるものではなく、国からの強制となる。したがって、医療費に関しては国費から賄われる。また、対象者には抗告や退院申し立てを行う権利が認められている。

 

 

 

鑑定入院とは何か

鑑定入院では裁判所から委託された鑑定医が以下の視点から『医療観察法』の適応であるかを鑑定する。
①対象行為時の精神症状が現在も認められるか
②その精神症状に治療は有効か
③社会復帰阻害要因を減じなければ再犯の可能性があるか
以上の視点から『医療観察法』の適応であるかどうかを鑑定し、裁判所に鑑定書を提出する。
裁判所では裁判官1名と精神保健審判員(精神科医)1名の合議体で鑑定書を検討し、時には対象者に直接面会し、入院処遇、通院処遇、府処遇、却下の審判を下す。